70代、元大学教授3|男の手料理は黙ってうどん

職場相談に乗ってもらうために大学時代の恩師の元を訪ねた…はずだったのに…。

「気晴らしにもなるだろうし、昼食でも一緒に食べながら」のはずが、なぜか教授の自宅にいる私。

何かが…何かがおかしい…。でも、元とはいえ大学教授。しかも理科系。何か考えがあってのことに違いない…。きっと、きっとそうなんだわ!!

と思いつつ、案内されるままにキッチンの椅子に座る私。

(そこ、客間じゃないのね…?)

恩師の自宅に行ったらおもむろに手料理を振舞われた件

「いやぁ、遠いのによく来てくれたよねぇ」と言いながら、紅茶を入れてくれる教授。

「ああ、そうそう、いつも教授の研究室からは、美味しそうな紅茶の香りがしてたっけ」

「たまに、学生にも淹れてくれるんだけど美味しいのよね〜。いい葉っぱ使ってるっていうか」

「そうか!お茶が飲みたかったんですね!そうですよね!教授、お茶が好きですもんね!」

と一人で、脳内劇場中の私。「そりゃあ、キッチンのテーブルに案内されるよね〜」と納得(いやいや、普通は客間でしょ)

私にお茶を入れ、ルモンドを出し、エプロンをする教授。

目が点になる私。

コンロに火を入れ、お湯を沸かし、冷蔵庫からうどんを出し、野菜室のネギを切り、シンクの下から麺つゆを出し…実に手際よく料理をする教授。

5分ほどすると、目の前にはネギうどんが。

「ほれ、お昼は俺の手料理。うどんだけどさ。昆布ダシ取ってあるから美味しいぞ」

あ。はい。いただきます…。

思ってたんと違いすぎて、動揺を隠しきれませんでしたが、確かに美味かった。

私は、職場相談をしに、あなたに会いに来たのだ。が。

「でさ。職場のゴタゴタの話は、もういいんでしょ?」

うどんを美味しく食べ終わった頃に、教授が言ったんです。

いやいや、何を言ってるのかと。私はそのためにここにいるんだと、思い、口に出そうとしたところに被せて来ました教授。

「電話で話を聞く限り、俺がどうこう言ったって『辞める』の一択しかないしよ。今更なんやかや言ったって無駄だろうさ。」

待って。ちょっと待って。それ、それ電話で言って欲しかった。そうじゃなかったら、こんな朝早くからこんなとこに来てない。午前中につくように頑張りもしなかったし、むしろこの場にいない。

というか…

私の話を聞く気がないなら、帰してくれ。

か・え・し・て(言えないけど。)

うどんデートの後はドライブデートがあるらしい

「それでな、気晴らしになると思ってさ。お昼終わったことだし、片付けも終わったらちょっとドライブに行こうよ」

気晴らしってことを強調してるけど、それ完全に教授の気晴らしですよね(言えないけど!)

老人介護の精神でドライブ行ってあげてもいいけど、行ってあげてもいいですけど。

私のこのげんなりした雰囲気もちょっと察してくれます?察するどころか、かちゃかちゃ台所の片付け入ってるしー!!!エプロン、絶対亡くなった奥さんのエプロンでしょ!花柄で可愛いー!!!

このときに「話を聞いてくれないなら、帰ります」って言えばよかったんですけどねー。(言えないって。)

 

コメント